中国木材株式会社 代表取締役社長 堀川 智子

ここ広島で、日本最大クラスの木材メーカーとして、
木造建築には欠かせない構造材を開発製造する
中国木材株式会社。これからの住宅建築、
そして地球環境を守る取り組みについて
堀川社長と小誌発行人・前田社長が語り合う。
住宅の梁・桁で日本トップシェア
木造住宅3軒に1軒が採用
前田
今日お伺いしている呉市の本社は目の前が瀬戸内海で、敷地内に大型船が着港できる港があります。窓から見える景色は、大きな原木が積まれていてすごい迫力ですね。
堀川
ありがとうございます。ここからでは分からないと思いますが、あの原木は1本の長さが12〜13mもあるんですよ。
前田
そんなに大きいんですね。製材の世界では国内トップシェアの知名度と規模を誇る中国木材さんですが、「くらうど」読者の皆さんのために事業内容をご説明いただけますでしょうか。
堀川
弊社は住宅の構造材をつくっています。柱や梁、桁など住宅の骨組みになる部材ですね。例えば梁では木造建築住宅の33%で弊社の製品が採用されています。つまり、3軒に1軒がうちの製品を梁に使ってくださっているんです。
前田
そうなんですか、すごいことですね。ところで堀川社長の前職は公認会計士でいらしたとか。
堀川
はい、会計監査事務所に勤務していました。学生時代は、まさか社長として会社を継ぐとは思っておらず、叔母が経理をしていたこともあって、会計の分野から支えられたらいいな、くらいに思っていました。ですが、会社が大変な時期に、現会長で当時社長だった父のがんばる姿や、母が心配している姿を目の当たりにし、家業ですから皆で支えていかないと、と考えるようになりました。
前田
そこで会計監査事務所を退職されて中国木材へ。
堀川
はい、初めは会計監査として加わりました。保守的な業界なので入社直後は髪の色がちょっと茶色いよ、と注意されたこともありました(笑)。私がやっていた監査の仕事を英語でオディットといい、語源は「聞く」という意味です。ですから「聞く」ことを心掛け、会社のこと、製材のこと、皆さんにとにかく聞いては学びました。
会社の転機となった商品
ドライ・ビームの開発秘話
前田
創業時はどのような事業からスタートされたのでしょうか。
堀川
随分昔になりますが、日本酒の樽を製造していました。呉は軍港もあり、酒を樽に入れて世界各地に出荷していたのです。ところが、戦後は瓶に替わって需要が激減しました。試行錯誤の末、製紙用の木材チップの製造へ転換し、成功しました。しかし、やがて海外から安いチップを大型船で大量輸入する時代となったため、父の代に製材業へと転身して今に至ります。
前田
時代の変化に応じて事業を転換して来られたのですね。
堀川
会社の歴史の中で転機になったのが「ドライ・ビーム」という製品です。日本の在来木造工法のために、会長がトップダウンで研究開発した米松の乾燥材です。歪みや狂いのもとになる木材中の水分を中心までしっかり抜くことで、精度の高い木材となります。1980年代、日本の木造建築の梁桁は米松グリン材という未乾燥の材が主流で、弊社は当時日本最大規模の月間3万㎥の原木を製材していました。父はその自慢の米松で自宅を建てたのですが、1年経つか経たないかのうちに、乾燥収縮による歪みが生じてしまったのです。建築前に十分乾燥させた材なら変形は避けられたのではないかと思った父は、「このようなクレームにつながる住宅の材料を製造する企業では将来に渡って存続できない」と、周囲の反対を押し切ってドライ・ビームの開発を始めたのです。
前田
販売当初からトップシェアを得られたのですか。
堀川
当時の社会通念に乾燥材の意識はなく、価格も未乾燥材より高かったため、最初は受け入れられませんでした。ところが、阪神・淡路大震災以降、耐震基準が変わり、全量強度検査を行う無垢材ドライ・ビームは、強い木造建築の材料として評価されました。
前田
会長の信念と熱意が実ったのですね。
森と環境。製材メーカーとして
地球規模で事業を考える
前田
中国木材さんは、ホームセンターなどで買える新しい商品として、純国産杉の無垢材「カフェ板」などのDIYやリノベーション用の素材を発表されています。私たちもDIYのショップを出したり、約15年前から無垢材をリフォームに取り入れたりと力を入れています。今後さらに世の中にDIYを根付かせたいと考えているのですが、堀川社長はどのようにお考えでしょうか。
堀川
私どもでは、カフェ板を活用して、DIYをSDGsに役立てるキャンペーンを始めました。日本には、コストの点から国産木材の需要が少ない時代があったため、伐採に適した時期を過ぎ育ち過ぎた植林木がたくさんあります。そうした古い木は花粉症の原因となるだけでなく、若い木と比べてCO2の吸収量が少ないのです。ですから国産木材を使って需要を促し、古い木を伐採して植え替えることが、脱炭素を進め、地球環境を良くすることにつながります。そこで、カフェ板を使ってDIYした写真や動画にハッシュタグをつけて「#カフェ板」としてSNS投稿することで、日本の山林応援につなげようという企画を実施しています。
前田
DIYが植林保護のきっかけになるわけですか。おもしろい試みですね。環境ということでは私どもでは、シックハウス等の問題解決に、無垢材や漆喰、珪藻土を使用するなどの提案をしています。コスト削減のためにお施主様ご自身で壁に漆喰を塗っていただくなどのDIYをおすすめしていますが、最終的にコストよりも、自分で手掛けたことの喜びや楽しみ、思い出となり、愛着を持っていただけているようです。
堀川
マエダハウジングさんは何年も前からDIYを応援されていますね。
前田
ぜひ一緒に取り組ませていただけたらうれしいです。コロナ禍前ですが、日本のものづくりのすばらしさをお施主様にも見てほしいとの思いから、年に1、2回はバスツアーで工場見学などもやっていました。
堀川
いいですね。弊社でも植林ツアーを企画していますし、ドライ・ビームの製造工程なども見ていただけたらうれしいです。
前田
それはおもしろそうです。今日は有意義なお話しをありがとうございました。
中国木材株式会社
代表取締役社長
堀川 智子
慶應義塾大学卒業後、大手監査法人に勤務。1994年に中国木材の非常勤監査役に就任、99年入社。2015年代表取締役社長就任。趣味は旅行で、バッグパッカーとして69カ国を訪れるなどの経験を持つ。