ドリームベッド株式会社 代表取締役社長 小出 克己

広島発のベッド・インテリア家具メーカー「ドリームベッド」。
同じ住空間に関わる企業としての取り組みや今後の展望について、前田社長がお話しを伺いました。
広島から始まって世界へ
創業70年を迎える
前田
ドリームベッドさんといえば、ブランドのベッドやソファ、インテリア家具のメーカーとして知られています。会社の成り立ちと歩みについてお聞かせ願えますか。
小出
1950年創業で今年70周年です。創業者は戦前、広島で履き物の会社を経営していましたが、戦後は戦災孤児や戦争寡婦、戦傷病者の方々のため生活の糧を得られる場として授産所を始めました。外部からの注文に応じていろいろ仕事を引き受けていましたが、進駐軍からベッドの修理を頼まれるようになり、やがて製造まで行うようになりました。これがドリームベッドの前身です。創業当初のボランティア精神は弊社の中に根付いており、障がい者の方を採用することもかなり早くからやっています。
前田
そういう創業者の思いといったものが今、どのような形で伝わっているのですか。
小出
消費者に正直でなければならない、ということと、もう一つは地元・広島への貢献ですね。この考え方が今も強く残っています。
前田
日本も戦後、生活スタイルが洋風化していきました。洋風の集合住宅ができたり、寝具も布団からベッドへと変わっていきました。事業を行っていく中での転換期はありましたか。
小出
当初は修理から始まり、その後は撤退する進駐軍から譲り渡されたベッドを修理して販売するというような形になりました。やがて生活スタイルの洋風化が始まり需要が出てくると、ベッドを新規に製造するようになりました。当時は広島県を中心に中国地方のごく一部へ販売していました。高度経済成長期に事業を大きく成長させるため関東進出を試みましたが、当時の広島は東京などから見るとまだまだ“地方”。関東の家具店さんから「田舎ベッド」と言われ扱ってもらえなかったといいます。そういうことから、関東の市場を攻略するためにはブランドがないといけない、と考えました。ヨーロッパやアメリカのブランドを日本に導入するため、創業者と2代目は何度も欧米へ足を運びました。
世界で唯一の
製造ライセンス
前田
それが現在のさまざまなブランドとして実を結んだのですね。
小出
フランスのリーン・ロゼやアメリカのサータといった有名ブランドとライセンス契約を結び、関東への進出も何とか果たすことができました。ライセンスというと海外で製造した製品を輸入することがほとんどですが、弊社の場合いずれのブランドも製造ライセンスをも有しています。特にリーン・ロゼは、世界で唯一、弊社のみが製造を認められています。海外製品を輸入してそのまま消費者に提供するのではなく、日本の気候風土に合った、日本人の体格に合った製品を作ってお届けしたいという創業者の思いで、一貫した自社製造にこだわっています。
前田
私もショールームでリーン・ロゼの製品を拝見して、モダンでとても気に入りました。リーン・ロゼもサータも海外で人気の最高ブランドですね。その製造ライセンスを取得するというのは並大抵のことではなかったでしょう。
小出
ええ、当時は相当苦労したようですね。ベッド製造で培ってきた技術を理解してもらうため、何度も足を運んで向こうの経営者と話を重ねて、きちんとした製品を作ることができる企業だと信頼していただいたのです。トータルデザインを崩さずに、サイズなど日本の市場に合ったものを作る力を認められたということでしょう。
家具でも家でも
いいものを長く使うために
前田
私どもの会社は家のリフォームを行いますが、住空間において家具も大きな要素だと痛感します。気に入ったソファを1つ置くだけでも毎日が幸せに感じられるものですね。
小出
そうですね。気に入ったもの、良いものが1つあるだけで日々の生活が豊かになりますね。
前田
私は北欧に行ったときにそれを強く感じました。夜が長く家で過ごす時間が長いためでしょうか、家具のセンス、照明のセンスがすばらしいなと思います。
小出
我々も仕事で欧米に行きますが、欧米は家具文化が根付いていると思います。部屋をトータルコーディネートすることが日常化しています。日本はまだそこまで家具文化が育っていないように思います。
前田
ヨーロッパではいい家具を代々伝えていきますよね。
小出
そうですね、ソファでも張り替えて長く使います。張り替えには技術が要りますが、弊社にはその技術力があります。日本でも使い捨てでない家具文化が根付いてほしいですね。
前田
本当にそう思います。いいものを長く使うというのは、住宅でいえば直して住み続ける、家のリフォームにもつながります。
消費者と直接つながることが
重要な時代
前田
社長に就任されてから、どのようなことに取り組まれましたか。
小出
弊社は従来メーカーとしての性格が強く、消費者と直接つながることを積極的に進めてこなかったと思います。今後はショップやショールームなど、直接消費者の声が聞ける場が非常に重要になってくるのではないかと思います。昨年から広告をテレビからウェブへと軸足を移し、消費者と直接つながることができるようなマーケティングに力を入れています。サータの認知度向上など効果が表れていると思います。
前田
最後に、小出社長にとって住み心地のいい家とはどんなものでしょうか。
小出
やはりデザインも含めてトータルでコーディネートされた空間となっていることですね。住空間にはその人の暮らし方、生活感や考え方が出ると思います。
前田
消費者の方々に安らげる空間を提供するために、企業間でも協調していけるといいですね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
ドリームベッド株式会社 代表取締役社長
小出 克己
1948年生まれ。2003年入社、2017年代表取締役社長就任。妻と娘、息子、母の5人家族。趣味は読書。座右の銘は「死して後已む」。