タレント 西田 篤史

広島を拠点にしながら、ラジオ・テレビを中心に40年近く活躍し続けるタレント、“あっちゃん”こと西田篤史さん。
幼少期から職人が集まる町で育ったという西田さんに、こよなく愛する広島への想いや活性化のための提言を聞いた。
職人さんの町で育ったから
腕の善し悪しは“音”で分かる
前田
西田さんとお会いするのは実は2回目です。一度だけ「週刊パパたいむ」に出演させていただいたことがあり、廊下ですれ違った西田さんにご挨拶したときに、とても感じの良い方だなと思っていました。視聴率が良く、いわゆるお化け番組でしたね
西田
懐かしいですね。僕はラジオでデビューしてテレビに移行し、テレビもデジタルになり…と、ちょうど変わり目の時代に立ち会えたローカルのタレントですね。ラジオは、普通の大学生だった僕が広島弁でしゃべり始めたのですが、それが当時は珍しかったせいか、「なんなんやあいつ!?」って思われながらもそれで広島の皆さんに覚えてもらえて。普通にしゃべっていたらたぶん誰も覚えてくれなかったでしょうね。その後、歌手の松山千春さんにも「お前はずっとローカルでやれ」と言われたこともあり、広島で活動を続けています。
前田
西田さんは中区河原町でお生まれになったんですよね?
西田
そうです。広島の下町で、職人さんがたくさんいて、材木屋さんや瓦屋さん、建具屋さん、襖屋さんなどが集まっていて、みんなの顔が見える町でした。朝9時から木を切る音やかんなを叩いたり木を削る音が聞こえ始め、そういう音を日常的に聞いていたので、上手な職人さんとそうでない職人さんの仕事は、今も音で分かるんです。でも、知り合いの宮大工さんは、大工さんがだんだん減っている現状をとても危惧していました。若い職人を呼んで家を建てる手伝いをさせてみた瞬間、まったく技術を持っていないことが分かって情けなかったとも言っていました。それは、山から切り出した木にかんなをかけるところから始まる日本伝統の家づくりが廃れていっているということの証でもありますよね
リフォームが結ぶ家族の絆
それを担う職人の育成も急務
前田
私たちも職人さんの激減を実感していて、大工さんは毎年約2万人減る一方、2000人くらいしか成り手がいないのが現状です。職人さんの善し悪しはリフォームの善し悪しに直結し、このままでは10年後には私たちも仕事ができなくなるのでは、と危機感を感じています。なんとかこの現状を変えたいと、イベントの中で「こども工務店」と題して、会場で本物の柱を組んで小さな平屋の家を棟上げするという試みを行っています。小さい子どもさんたちにかんなで木を削ってもらったり、のこぎりで木を切ってもらったりして、最後に菓子まきをします。
西田
一本の柱をかんな一つできれいに削りあげたり、のこぎりできれいに切って隙間なくきっちり組み上げていく大工さんの仕事を、もっと子どもたちに見せてあげたいですよね。今の子どもは何でも「危ないからしちゃダメ」ばかりだけど、そういったイベントで大工さんの仕事を少しでも体験させてあげて、棟梁の仕事を間近で見せ、表面が滑らかに仕上がった柱を実際に触ってもらいたい。そうすれば、大工さんになりたいと思う子どもや、手に職を付けたいと思う子どもが絶対に増えると思いますよ。
前田
西田さんは住宅リフォームに関心をお持ちですか?
西田
僕が今住んでいるのは40年くらい前に祖父が建てた家で、実は親の持ち家の3階部分をリフォームしたんですよ。リフォームでは、「犬が滑らないように床は無垢の木に」、「趣味の料理を楽しめるキッチンにこだわりたい」など色々な要望を出しました。何年経った家でも、自分たちの住みやすいように工夫して空間をつくったら、今まで会話の少なかったお父さんと娘さんが会話を交わすようになったり、お父さんと息子さんが同じ時間を持つようになったりできる可能性だってある。それって素晴らしいですよね。
「若者が誇りに思える街に!」
大好きな広島に寄せる想い
前田
西田さんは「庄原市ふるさと大使」でもあるんですよね。
西田
そうです。父方の実家が庄原にあるのですが、庄原も空き家が増え、田んぼも荒れているという状況は他の地方と共通した問題です。その解決方法の一つとして、僕は市長に提案しました。「ここに住みたいと思う若い人も絶対いるはずだから、何か一つ空き家におまけを付けてください」と。例えば、空き家の隣に登り窯を付けてあげる、ステンドグラスを作る工房を付けてあげるといったことです。その代わりに、住む家は自分たちの力で直して住んでもらうとか。あるいは畑で近所のおじいちゃんおばあちゃんが野菜の作り方を教えてあげるとか。そういったサポートをしていけば、日本中の空き家問題も少しは解消する一助になるのではないかと思いますね。
前田
この度出版された西田さんの著書『あっちゃん、』からは、「広島を活性化したい」という思いがひしひしと伝わってきます。具体的に考えておられることはありますか?
西田
一つは、広島東洋カープが日本一を果たした旧広島市民球場跡地に、日本一と呼べるものをつくってほしい。例えば日本一の大きさの観覧車とか、そういったものを。そして、より多くの外国人観光客を迎え入れる体制づくりをして、原爆で一度廃墟になった街がここまできれいな街になったことをもっと多くの人に見てほしいんです。そして、古き良きものを残しながら新しいものを育て、広島に住む若い人たちが、胸を張って「ええじゃろー、広島!」って他県や外国から来た人たちに自慢できる街になってほしいですね。
タレント
西田 篤史
Profile
広島県広島市生まれ。
広島修道大学3年生の時にRCCラジオ「たむたむたいむ」に初出演。卒業を機にフリーで仕事を始め、ローカルタレントに転向する。以後、ラジオ・テレビ・イベント司会・CMなどで活躍。現在は「HOME Jステーション」の火・水曜レギュラーコメンテーターとして出演中。趣味は車、熱帯魚、音楽など。

書籍の紹介
広島のローカルタレント あっちゃん、
広島のNo1ローカルタレント・西田篤史の初の自伝。広島を愛し、広島から愛され続けた西田篤史の40年近くのローカルタレント活動が綴られています。番組の裏話から、松山千春、村下孝蔵、萩本欽一などの一流歌手、タレントとの出会いや教えなど、ローカルだからこそ応援される西田篤史の生い立ちから未来までをまとめた1冊です。
著者/西田篤史 発行/ザメディアジョン 価格/1404円